アースランテとの駆け引き(十三)/朧月夜
 
「奴隷も捕虜も?」フランキスは息を飲んだ。
現状、クールラントがアースランテに負けないとは思っていた。
第一次ライランテ戦争の後、アースランテはその国土を、
三分の一ほどにまで減らしていたのである。

その地の民は、ラゴス、クールラント、ファシブルに寝返った者もあった。
しかし、大半のアースランテ国民は、アースランテに忠誠を誓っていた。
支配は、偽りの支配である。やがて、
我が民の正当な支配者であるアースランテが領地を取り戻す。

アースランテの民たちは皆そのように思っていた。
この国家意識は、古代の帝国であるアルスガルデにも匹敵するものだった。
どこからその力の源は湧いてくるのか。度重なる戦乱によって培われたものか?

「そうだ。奴隷も捕虜もだ。そんな体制を貴国が取れるのかな?」
「いいえ、我が国はまだ……祭祀会議が国を一切支配しているものですから」
「国とはまことに異なるものだな。国民と国是が一致してはおらぬ」
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