囚われたイリアス(一)/朧月夜
イリアス・ナディを捕らえたのは、ガージェス・ノルディアという男だった。
彼は、オーバ・ニーチェのナンバー2の位置を占めていた。
ガージェスは、フランキスにも劣らない野心家だった。
そして、祭祀クーラスに対しても、完全に従順だったわけではない。
「さて、この娘をどうしようか? 祭祀クーラスに引き渡しても、
いくばくかの報酬は得られるに違いない。しかし、それだけだ。
あるいは、アイソニアの騎士に直接交渉してみるか?」
ガージェスは、舌なめずりをしながら、不気味に言い放った。
ガージェスは、多少は武芸にも秀でていた。仲間と数人で、
アイソニアの騎士を襲えば、勝利することも可能であるように思われた。
イリアスは今、ハンザガルテのある建物の地下室に監禁されていた。
「子供を誘拐することは、容易いことだ。嬲り殺すことも。
しかし、今この子供には切り札としての価値がある。
さて、俺はどこまで行けるか? 闇の密偵止まりか? クールラントの王か?」
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