囚われたイリアス(四)/朧月夜
 
「わたしは、野心家には屈しません。
 野心家とは、つねに世界に災いと混乱とをもたらすものです」
「たしかに……」と、ガージェス。
「アイソニアの騎士は潔白かもしれませんね。しかし、彼は戦いの世界にしか生きられない」

「わたしは、アイソニアの騎士と組むことも考えているのです。
 そして、クールラントの支配者となる。
 そして、アースランテもラゴスも、その支配下におく」
「なんという無謀な試みを……」イリアスは絶句した。

イリアスの幼い心のなかでも、戦争に対する反発の念はあった。
アースランテは、ライランテ戦争での敗戦によって、十分に弱体化していた。
これ以上戦いを続けることなど、不可能だろうとイリアスは思っていた。

しかし、戦乱の火種がクールラントからやってくる……
イリアスは逡巡した。(わたしは、グーリガン様を助けるだけではだめなのか?)
「今こそ、あなたがその権限を振るう時なのです。イリアス・ナディ」
   グループ"クールラントの詩"
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