イリアスの矜持(二)/朧月夜
 
麻袋の中から出されたイリアスは、数日食事を取っていなかった。
その表情は、憔悴して青ざめている。
その眼前に、祭祀クーラスが彼女を睨(ね)め付けている。
「なんだ、こんな子供か! アイソニアの騎士は幼女趣味か?」

「そうではないと聞いています。イリアスは、その年の割には、
 聡明な思考を有している少女だということです」
「オーバ・ニーチェの報告か? それも怪しいものだ」
「そこな祭祀(ドルイド)、我を見くびろうというのか?」と、イリアス。

イリアス・ナディは気丈だった。王家の血を引いているだけのことはある。
「さて、イリアス・ガ・ラ・ハルデン。あなたには、
 アースランテの国を亡ぼすための駒になってもらいます」

「エインスベルは良いのですか?」フランキスは声を荒げた。
「策は考えている。エインスベルも、アースランテも、滅んでもらう」
そのクーラスの心の奥底は、フランキスには推し量れなかった。
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