イリアスの矜持(四)/朧月夜
「クールラントは、中立を保とうとしています」祭祀クーラスは言う。
「そのためにも、アイソニアの騎士を我が国に取り戻したいのです」
それが嘘だということを、イリアスは即座に見抜いた。
「あなたは何重もの網を張っている。わたしを攫う必要はなかった」
「子供は……素直に物事を考えることですよ。
アイソニアの騎士が味方になるのであれば、あなたの命は助かるのです」
「それは、クールラントの覇権のためですか?
アースランテの密偵たちと言えども、無能ではないのです」
「今のあなたに、懐柔は通じないようですね。では、脅しですか?」
「わたしに脅しは通用しません。初めから、命を無くす覚悟は出来ています」
「ははあ。それでは、アイソニアの騎士が悲しみますね。あなたの最愛の人が」
イリアス・ナディは、その言葉に迷いの表情を見せた。
自分の命なら、どうにでもなれば良い。しかし、愛する者の悲しみは……
イリアスには耐えられないように思えた。(グーリガン様!)
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