いくつもの運命(六)/朧月夜
戦士エイソスは戸惑っていた。クシュリーが
これほどまでにエインスベルを憎んでいるとは、思わなかったのである。
彼は、初めてその妻に対して疑念を抱いた。
あるいは、彼女こそクールラントの運命を握っているのではないか?
そんな思いが、戦士エイソスの脳裏をかすめた。
彼は、クシュリーとエインスベルが和解することを、
お互いの才能や環境を認めあうことを望んでいた。
しかし、それは後になって、はかない望みだと分かった。
戦士エイソスは、この後アイソニアの騎士を殺す。クーラスの目論見どおり。
そして、エインスベルが彼の命を復活させる。そんな未来が、
戦士エイソスの心にふと思い浮かんだのだった。
(もしや、クシュリーは人間の生死を絶対のものとして、
考えているのではないか?)と、戦士エイソスは思った。死を超越した存在、
あるいは神、それらをクシュリーは憎んでいるのではないかと。
前 次 グループ"クールラントの詩"
編 削 Point(2)