エインスベルの反逆(三)/朧月夜
イリアスが誘拐されから、一か月半の時が経とうとしていた。
アイソニアの騎士、そしてヨランからの連絡はない。
エインスベルは、戦士エイソスの邸宅に身を隠しながら、
それでもイリアスの行方を探索していた。
「オーバ・ニーチェ、厄介な組織だな」エインスベルは言った。
「このごろの国家では、秘密主義が蔓延しているのです。
かつてような、騎士と騎士同士の戦いは影を潜めている。
情報戦こそが、我らの国を率いているのだ」と、戦士エイソス。
「それは、忌むべきことだ。我々は、戦いのみによって、雌雄を決するべきだ」
そう言うエインスベルの言葉は、もっともな言葉でもあった。
しかし、あまりにもはかない。戦いはすでに、泥沼の様相を呈しているのである。
「わたしは、祭祀クーラスを暗殺しようと思う」、とエインスベル。
「それは、あまりにも危険だ。クーラスの周りには、幾十人もの護衛がいるのだぞ?」
「しかし、このままではクールラントは陰謀のうちに滅ぼされてしまうだろう」
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