糸が切れた話/道草次郎
張り詰めた糸が
プチんと切れるみたいに
世界が落っこちた
落っこちた世界は
通りがかりの犬に食われてしまった
あぜん
ぼーぜん
ぼんやりしていると
小人がゾロゾロとやって来て
もう一度
丈夫そうな糸を張っていく
すると
世界はふたたび息を吹き返す
小人を一人つまんで
鼻先に持って来る
「おい、あの糸には何を使ってるんだ」
小人は震えながら答える
「あ、あれは古代鯨のヒ、ヒゲです」
小人を口に放り込み
バリバリ音を立てて食ってしまう
うーむ
まったく不条理な話だ
空も樹も土も花も
みんな
知らんぷりではないか
古代鯨のヒゲだって?
それにしても
ずいぶん
珍しいものを考えたものだナ
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