啓蟄と芽ふき/道草次郎
 
じっと殻に背を丸め
春を待つ蛹(さなぎ)のように森は
いまだ
あわい揺曳(ようえい)の入江

冬木立のはざま
小橋のそでに
ゆたかな寝がえりをうつ
にがい蕗(ふき)のとう

おもむろに
耳たぶのハンモックへ
春の符牒は
交わされてゆく

そこはかとない
愁いをしたがえた風は
醪(もろみ)のように
まだ林で遊んでいる


   グループ"幻想の詩群"
   Point(6)