狐夫婦/……とある蛙
 
朝靄の中
白い影が一歩また一歩
呟く声の方向は
白い視界の中の山脈
吹雪いている心の中の
一線の黒い帯赤い線

ほんの三ヶ月前には
仄かな暖かさのため
身を寄せ合って生きてきた
そんな老狐二匹

春先は
緑の山脈に
獲物を追い込んで
二匹で分け合って食べたり

水を飲みに渓谷を下り
ついでに魚を仕留めたり

雄狐は雌狐のえさを食べる姿を見ているのが好きで
雌狐は雄狐と一緒にしっぽを立てて歩くのが好きだった

それは突然やってきた
雄狐は何が何だか分からなかった。
雌狐が突然体を震わせて
真横に転倒したのだ

雄狐はつきっきりで見守った。

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