もうひとつの日傘のチェリー/りゅうのあくび
 
りの雨の日
彼女の住む旧い
アパートへと送るために
ひとつ傘の下
ふたりで歩いていた
雨水を弾く日傘は
とても小さくて
ふたりは降りしきる雨に
びっしょり
濡れながら
帰って行った
ストライプの模様の傘には
紅いチェリーの絵柄が
描かれていたことを
想い出す

やっとのことで
僕は外来で
診察を終えると
待ち合わせ駅へ
復路を電車で向う
休日の昼下がりに
高層ビルが立ち上る
まるで透き通る
鍵穴のような
青空からは
もう初夏の陽射しが
嬉しそうに
そっと零れている

   グループ"彼女に捧げる愛と感謝の詩集"
   Point(7)