笛吹き少年の行くえ(7)/Giton
 
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   【7】 災害と隠蔽


   下書稿(三)手入れ(2) 〔A〕+〔B〕

    なだれ

 若き母織りし麻もて
 身ぬちみな紺によそほひ
 藁沓に雪軋らしめ
 笛吹きの子は出で行きぬ

 青ぞらのひかりの下を
 ちりのごと小鳥啼きすぎ
 この杉の峡の奥より
 あやしくも神楽湧ききぬ

 雲が燃す白金環と
 白金黒のいはやを
 日天子乱れ奔りて
 児のすがたすでになかりき

 よもすがら雪をうがちて
 村人ら児をもとめしに
 その児の頬かすかにわらひ
 唇は笛吹くに似き


前回の最後に見た〔A〕+〔B〕の合体形「下書稿(三)」に
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   グループ"宮沢賢治詩の分析と鑑賞"
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