夜更けの紙相撲・今日もどこかで雨が降る/そらの珊瑚
 
、まるでそうした自覚がない。
 思い出というのは不思議な生き物だ。いつのまにか消え絶えてしまうものもいれば、餌をやらないのに、気づけば大きく成長していたりする。
 死という得体の知れなさ、不条理なものを感じた初めての体験だった。

 彼の家はもう取り壊されて、跡地はコインパーキングになっていた。
 コンクリートで固められたそこだけ、晴れていてもなぜか雨が降っているような気がする。少年のままの彼が、傘をさして笑っているような気がする。
 いつか誰かにわたしのさいごも切り取られるのだろうか。
 そのとき、雨が降っているのか、いないのか、知ることが出来ないのは残念な気もするが、そもそも死ぬということはそういうことなのだろう。
 
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