Miz 8/深水遊脚
。そのうえ、仮名に直して鍵をもとに消し込みをかけて、現れたモールス符号を解くまで記憶の乱れがなかった。会計や監査にも関わっていて、いま丁度会社の不透明な金銭の流れについて調べている。そんな仕事をしている私なのでどこに何があったか順番で覚える記憶力は必須なのだ。それにしてもこの詩に関する記憶は鮮明すぎた。鮮明すぎて、似たようなことが監査で起きたならば誰かの誘導や印象操作の可能性も考えるべきだろうと思った。この詩に関してはそもそも私に無関係なので、それ以上の詮索は一切やめた。ノートはマスターに返した。
カウンターにある名刺サイズのショップカードのなかからひとつ選んで手に取った。「フィットネス倶楽部 Ichida」と書かれていた。 運動の必要は感じているのだけれど、 この場所からは少し遠いし、仕事帰りに寄るには不便な場所にあった。クラブでの人間関係も一般に煩わしいときく。もっともマスターの話ではここの評判はいいようだ。気が変わったときのために、ショップカードをひとつ頂いた。
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