初対面のふり/深水遊脚
 
たせる、というふうに郁子が言った。

「これ全部、洋くんが作ったの?」
「そうだよ。お腹すいていたら遠慮なく食べて。珈琲、スパークリングワインもあるし。先にシャワー浴びてくるね。」

間が持たない会話から逃げるように僕は風呂場に行った。なまじ知っているだけに、予定通りにまずスパークリングワインで乾杯する気分ではなかった。シャワーも一緒に浴びることが多かったけれど、いまとてもそんな気にはなれない。体の隅々まで洗ったけれど時間はかけずにすぐに出た。大きなバスタオルで注意深く体を隠して、声をかけた。

「シャワー浴びる?」
「うん。お料理、少しもらったよ。洋くん、すごく上手だね。」

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