褐色の濃いあたりに/深水遊脚
。以前はそうでもなかった。それなりに暮らし向きのいいときは聴こえてくる曲を歌っているシンガーを気にかけたりはしていた。そのシンガーの別の曲を探して聴いてみようという好奇心もあったし、そのように音楽にお金や時間をかけたり、クリスマスソングが一端を担う物欲刺激装置に、それと知りながら乗っていろいろ要らぬものを買い揃えたりしていた。どちらかといえば非モテ、コミュ障と片付けられるめんどくさい性格が災いしてクリスマスには小さな恨みこそあれ、それは数時間単位で湧いては消える物欲と同じレベルのもので、買い物の満足とともに消えていた。そういう気晴らしの仕方は、もうできない。収入は減り、大事なものに気持ちを絞ってそ
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