中二階の黒猫/……とある蛙
 
中二階の六畳間で
タンスの上の黒猫が奇妙なことをする。
長い舌を出しながら
タンスの上を転げ回るのだ。
そして突然畳の上に下りてきて
俺の目の前で長い舌を出し入れする
じっと俺の目を見つめて
俺は猫の言いたいことが分からず
怒りで黒目になっている
黒猫の瞳の奧をじっと見据えた。
そこには此処一〇年の
俺と女房の生活がパラパラ写真のように
また
後先バラバラになって映っている。
全く的外れなことに
俺は黒猫に向かって
鰹節を喰うか
等と話しかけている。
猫は唸っている
黒猫は知っているのだ
俺と女房の関係が突然断ち切られることを
黒猫は知っているのだ
俺が後悔ばかりしてメソメソしていることを

女房が部屋に入ってくる
黒猫は何も無かったかのように女房にすり寄る
座った女房の膝の上に
前脚を揃えて置き
そして女房の顔を覗き込むのだ
優しげな声を出して

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