睡眠/はるな
 
夜は眠るべきものだということを、少なくとも一日の終わりには眠りがあるべきだということを、あるときとつぜんわたしの体が忘れてしまった。とつぜんにだ。眠ろうとすれば、眠ることはできた。ただし四十秒ごとに目が覚めた。わたしは眠ることを諦めた。わたしの体にそれが必要でなくなったと思ったから。すぐに、その以前からわたしを悲しませていた頭痛がひどくなった。座っていると体ぜんたいをあたたかい大きな手で締め付けられるような心地になった。温い重みだ。血が廻らないような。そのくせ立ち上がれば、体はすかすかに軽く、六歩も進めば軋んでよろめいた。あらゆるものの重みが増し、傘を差すのさえ億劫になった。だから濡れて歩いた。雨
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