原風景2/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
りとか、そういう話は一切聞かなかった。
こんなバブルがはじけてまだ数年と経ってない不況──今ほどではないけれど──のさなかで、あてもないまま仕事を探さなければならない原田の身を少しだけ案じた。
と同時に、原田はリーチフォークの資格を持ちながらも、ここでけっこう長いキャリアを積んできていたので、それを利用して少しくらい暴れ、取れるものくらい取っておけばいいのではないかとも思った。半年以上の勤務であればバイトであっても雇用保険の受給資格は得られるのだから、原田もやろうと思えばそのくらいはできたはずだった。もっとも、この職場に来るまで長いことそれを知らなかった者がえらそうに言える立場でもなかったし、おかげでずいぶん損をしてきたこともあったのだけど、それにしてもという思いは正直、感じざるを得なかった。他人事ながら、残念だった。
帰り道、一人で歩きながら原田の顔を思い出し、
「明日はわが身、か」
誰もが思うようなベタなことを、ぼんやりとうす暗い空に浮かべた。
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