髪のこと/はるな
 
うのものがあるかわからないなら、目の前にある身体をつかうべきだ。それを道具や武器にみたてるのもいい。

白くなるまでに脱色した髪を、ところどころ汚れのように染めて、後頭部を刈り上げていた。どの指にも重たい指輪をして、似合わない赤い口紅を塗っていた。そのくせきちんと白粉をしないから、そばかすが丸見えで。
あのころだって、(あるいはいま以上に)からだはわたしの武器であり道具だった。
身体はいつも身体それ以上の役割を果たしている。
怠慢にしても、過ぎた武装であっても、身体は意味以上の役割をもっているように思う。

黒髪を褒める大方の人間はそれが古風だとか純粋だとかいう。
わたしにはただセックスのときに長い黒髪をかきあげるのを、ずっとずっとやってみたかったという理由がある。恋人のうえでそれが達成されたときからは、髪の毛をあかるい青色にしたいなという願望と、美容院へ行くのを億劫がる怠慢だけが、胸もとでからまっている。


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