猫のこと/はるな
ますようなことだったと思う。
なぜそんな夢を見たのかはわからない。その男の子のことは実際に好きだった。肌が汚れてもいない、頭髪も後退していない、だけど卒業だけは実際に危なかった男の子。長いあいだ片思いをして、向うの好意もあきらかだったのに、なぜだか交際することができなかった。そういう風に、お互いに好ましく思っていても、恋人になれなかった男の子はほかにも一人だけいる。ふれあえなかったぶん思いは純化されてしまって、自分でも置きどころがわからず、後悔するでも大切に思うでもなく、ただ好きだった気持ちだけが遠くなっていく。それは地面に置かれた小石のようで、なにかの拍子に心が大きくゆれると、ころんころ
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