膜のこと/はるな
にそういう装備があったのだろうか。自分を守るための手立てというのは、誰しも、別々の方法で持っているはずだ。わたしにとってのそれが、たまたま殻だったり膜だったりするだけで。わたしの装備は、いつだって物質的なのだ。手段ではなくて。
なんにしろわたしはここにいる。外側の世界、それとはべつのものとして。隔てられているにしろ、そうでないにしろ。夕暮れがあい色に変わる。子どもたちが帰っていく。春めいた空気が冬のそれに後退し、人々がカーテンを引く。洗濯物は取り込まれ、部屋のなかは湯気にみちる。温めた牛乳を手のなかに感じながら、小さな窓を閉めた。
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