はずかしいこと/はるな
言葉でもない。
生活をとめてはいけない。
それは今に始まったことではないのだ。物事は起こってしまったし、つねに起こり続けている。それは今に始まったことではないのだ。
これがたまたまわかりやすい形であっただけで、どんなときにも物事は起こり続けているし、終わり続けていて、始まり続けるのだ。そのうえで成り立っているいくつもの生活があって、それがどんなかたちに変わってゆくとしても、生活をとめてはいけない。あらゆる手立てで、あらゆる思いのなかで、生活をとめてはないけない。
恋人はときどきすごくやさしい。
ときどきではなくて、しばしばというべきかもしれない。
いくつもの呼び名でわたしを呼んでくれる。わたしはそのたびに名前を変える。
なんだっていいのだ。恋人がわたしを呼ぶためにつかう音が、わたしの名前になる。
はじめからそうだったのか、気づいたらこうなっていたのか、もうわからない。
わたしはもうずっと我を失っているのかもしれない。はずかしいことだ。はずかしいし、はしたない。そうと知りながら、我を失い続ける。
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