桃のこと/はるな
 
いものだもの。地に足のついた悲しみを得るには、女の扱いを知っている男に任せるのが良い。いつかは目が覚めて、きちんと日常に戻っていける程度のかなしみ。
女のひとたちは、いつだって桃のようにあざとく肌を剥くけれど、その桃だって、若いと林檎のように剥きにくいものだ。もう戻れないと知っていてそれでも望むから、剥いた肌があんなにじゅんじゅんと柔らかくなっていくにちがいない。熟れすぎれば肌が黄ばむことなんて、とっくに知っていながら。


   グループ"日々のこと"
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