彼とのこと/はるな
 
をしているのは、なんでもないようなことにしてしまいたいからだ。季節が変わってしまったくらいで、やっと会うのが普通。会えないことが、普通のことだと。そこで騒ぎ立ててしまったら、終わりだ、とも思っている。それは怖い。
そんなことを思ったのは初めてだ。手にいれたいのではなくて、一緒にいたいというのでさえなくて。ただ会いたいと思うのはなぜだろう。会っても、うまく話せない。言いたいことを言えるわけでもない。自分から押し倒すこともできない。どうしてだかわからない。そんな女に会いたいという彼の気持ちもよくわからない。ほんとうは自分はもっと魅力的なのだとも思う。それでも。

ぜんぜん伸びていない髪を、すっと掻き分け、鎖骨のあたりをなぜる指。髪がのびたね、と言って、すこし笑う。
ほんの時々、彼も、言いたいことなど何も言えない、というよりも言いたいことなどない、わたしに求めることなどなくて、ただ会いたい気持ちだけがあるのかもしれない、と思うと、すこし嬉しく、ほっとする心持になるのだけど、同時にものすごく切ない気持ちに襲われるのだった。


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