彼とのこと/はるな
を健やかに保つ」ためのストレッチをする。彼が身体をさわるほんの二時間やそこいらのために。そうして事実わたしは美しくなる。
「今日はどう致します」と美容師に訪ねられ、でも、わたしは、思うのだ。いっそ、驚くくらいに短くしてしまえば、彼は、気付くだろうに。ちまちまと、二センチ毛先を切り、艶を出すくらいでは、いつも気付かない彼。まえにいつ会ったか、いつ会えなかったのかにまるで頓着しない彼。いつもいつもいつも、いちばん美しいわたしのことをしか、知らない彼。お互いべつべつの場所へ帰るだけなのに。
なぜだろう。会いたくて会いたくて仕方なかったことを、言うことができない。そんなのは初めてだった。欲しいものは欲
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