たべるのこと/はるな
 
った。べしゃっと薄甘くて、ざらっとしてて。切っただけのりんごのほうがずっとすきだった、けど言えなかった。スプーンで口に運んでくれたらいいのになって思ってることも。黒い、塗りのおわんにいれて出されるのを、いつもたべきれなかった。でも怒られなかった。母のひんやりした、ぱんと張った手の皮が額をひとなでしていく。熱のときは居間に布団をだして、テレビをみながらねた。
もとから量をたべないむすめが熱をだすとよけいに何も口にしない。りんごをするかわりに、ぶどうジュースにポカリスエットをまぜたのを飲ませる。そうして額をなでるわたしの手は、むすめからしたらたしかにひやりとするに違いなかった。

くわがたが一匹
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