交錯詩「朝」奥主 榮  鵜飼千代子/鵜飼千代子
 
          奇数行 奥主 榮
          偶数行 鵜飼千代子


草むらにもぐりこみ
 地平線がゆるむころ
息をひそめた虫たちは
 オパールの海が有明方(ありあけがた)に満ちてくる 
光よりもはやく届く
 暮れ初(そ)める天使の時間より
湿りけの変化で朝を知る
 パステルカラーが白みがちなのは
触覚は小さなことにも
 後景のルクスを予告しているから
びくびくとふるえ
 朝暉(ちょうき)がゆるゆると差し込むと 
餌をかむ音さえもが
 たなびきは腹を白く発光させ
何か悪いものをおびきよせるかと
 横切るように雲の波路を披露する
複眼いっぱいにひろがる朝焼けを
 海ではなく空のおはなし
おだやかに見ることができない
 夜明けですよ

             2010年2月4日     鵜飼千代子
   グループ"連詩 交錯詩 他、共作 競作など"
   Point(9)