生前と死後のあいだで/小林レント讃3/渡邉建志
 

羽ばたきが聞こえた
僕は
まだ
それでいい
なんと、今まで聞こえているかのように書かれていた「笑い」は彼には聞こえていないのだと言う。僕は/あたらしくできた/石像のように/本を読んでいる/だけ、である。なんとぴったりくるすばらしい比喩だろう。地蔵のような彼は、しかしまだあたらしい石像なのである。

 僕は
 生きている声しか聞くことはないのだ
 あとしばらく
 もうしばらくの間は

ここの哀しさはもうなんともいえない、筆舌に尽くしがたい。さいごのくりかえしの声を聞け。彼はたぶん、自殺を射程に含めて考えている。今死ぬつもりはない。だけど、「あとし
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