生前と死後のあいだで/小林レント讃3/渡邉建志
 
しと見せかけて実はくりかえしではない展開をとっている。重心は後者(噛み殺し笑い、笑い声の見張り)にある。その、くりかえしによって不気味なものを隠したり覗かせたりするのが、ドキッとして素晴らしいです。「見張る」少年、という例の構図。このなんという透明な視線。「名前のない風景」でピエロの偽善を確かめた視線であり、「沈黙の部屋」で、「天井や 壁や いろんなものが/僕を押し潰そうとしないか見張っていた」その視線である。昔、天へと登っていった自殺者の笑いが、今、木々から降ってくるかも知れない、というのはすごいはなしで、その時間的射程の広さに思わず打たれてしまう。

 崖をのぼっていく水に
 じっと

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   グループ"フレージストのための音楽"
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