ある美しい愛の固定観念について/「智恵子抄」をとにかく読む(1)/渡邉建志
 
ない」文末が二回くりかえされています。この音楽はいいですね。読んでみるときもちいいです。
私がいちばんやられるのは「その上」です。
「永遠を刹那にふり戻してはいけない」というキメ台詞でこっちがはっとしているうちに、息もつかせずに「その上」と攻めてくるその隙のなさです。
音楽がおわると2行のすこし長い文が続きます。

私の心の静寂は血で買つた宝である
あなたには解りやうのない血を犠牲にした宝である
この静寂は私の生命であり
この静寂は私の神である
しかも気むつかしい神である
夏の夜の食慾にさへも
尚ほ烈しい擾乱を惹き起こすのである
あなたはその一点に手
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