現実/西日 茜
 
彼は、わずか17歳でテントにガスを充満させて自殺した。あまりにも計画的な死の、報道では知り得ない事実。彼のすべては電子回路の詰まった1台の箱の中にあった。こどもの日の今日、あの山に慰霊に向かう人々がいる。

計画されて実行する。リセットする命。励まされて期待され、穴ぼこだらけの未完なフィールドで、覚束ない足取りで彷徨っていた。「おまえだけじゃないぞ」という言葉が、真ん中から破壊していく。掻きむしった頭を押さえ、もう何処へも、一歩も前に進むことができない。

その日から1ヵ月。残された人々は今日、その山に向かう。しかし、未だ彼のすべてが詰まっているという箱の中身を開ける者はいない。

現実は・・・現実については、彼が生まれて17年間、その苦しみを知る者が1人もいないという事実と、無機質な電子回路に残されたメモリだけが記録する。その向こうの、言葉の交錯もまた、モノクロームの記憶として残像のように…


- ある身近な死に追悼の意をこめて彼に捧ぐ -


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