連作「歌う川」より その3/岡部淳太郎
水が
全方位から
ひとつぶずつの水が 囁くと
その囁きはひとつの
大きな
歓喜になって
銀河の群集の
隅に立ちつくしている
この惑星をくまなくつつみこむ
天も
地も
すべてが川であり
人が
ひとつぶの水であるように
この星も
宇宙の長大な川の中の 大きな
ひとつぶの水である
そして
その川の上にも
雨が降り注いでいる
氾濫
雨が降り
祈る人は川原で立ちつくし
川はあふれ
川はふとり
際限のない過食の川
祈る人は立ちつくし
その間も川は
あふれ
ふとり
かつてどんな王
[次のページ]
前 次 グループ"歌う川"
編 削 Point(5)