回帰/海月
何の変哲もない住宅街を抜けていくと
土地が高くなって
赤と黒と緑のレンガ造りの道に出る
車が橋(僕ら)の下を通り抜けて何処かに向かう
その姿(景色)を眺めて一日を見送る
部屋の窓からの景色は良いとはいえない
電柱と電線の空中都市に鴉が住むだけ
耳を澄ませば微かに犬とも猫とも取れる鳴き声が
闇に雑じり聴こえてくる
君のいない街に意味はない
だけれど
僕はこの街を離れようとせず
君の残した形ない温もりに縋り付く
今はただの鉄の温度とも解らずに
誰かが止めてくれれば良いの
だかれど
僕の事を中毒者、変人(めずらしいものを見る瞳)で見つめる
自分でも人ではないことに気づいている
古ぼけた畳の匂いと夕焼けの色
畳に散らかる
二十〜三十錠の薬の瓶
心地良さに呑まれて僕は眠りに吐いた
ただいま
と
その数分後に君が帰ってきた事は知らずに
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