シロップドライブ/もろ
 
もうずいぶん長い時間走っている。
湾岸沿いの高速道路
エアコンで温まった、小さな車の中
かすれたハナウタとエンジン音が聞こえる。
ヘッドライトが
きらきらとすれ違い
流れていく、夜。
車内は暑いくらいなのに
ハンドルを握る手が
あなたを追いかけた夜のように冷たく震えている。
このまま踏み込んで
突然現れた壁か
もしくは私に
ぶつかってしまっても
いいかな。
なんて、
カラフルな色でチカチカと点滅する観覧車を右手に見ながら
口笛を吹いた。
いつからいたのか
隣には、煙草をくわえたあなたが座っている。
また、
煙草の匂いのする車になってしまうね。
なるべくやさしく
アクセルを踏み切って
光が線で見えるスピードで
走り抜けて
いつだって、涙は落ちる前に甘いシロップへと変わる。
走りついた先は海だった。
砂でできたニセモノキャンディーが
塩辛くて
溶ける前に吐き出してしまう私は
嘘のない温度で握られた手を握り返して
ひとり
朝の海辺に立っていた。


**poenique**詩会**2006.12.02**
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