小詩集  日は出づ  暗き予兆のまま/杉菜 晃
 
◇暮れ

年が暮れる
暗い時代の予兆は
そのままに

初日は
それらを
もろに背負つて
出てくるだらう


◇木にぶつかれば

蝸牛は彼なりの歩みを
何昼夜もつづけて
ある日
障害にぶつかつた

見上げれば大木
ここからは垂直の登攀になる
彼には
水平も垂直もない
まつすぐつづくものだけが
道になる


◇日向ぼこ

日向ぼこをしてゐると
遠くから
呼ばれてゐる気がする
いつたい
呼んでゐるのは
だれだらう


◇枯野の果て

枯野径を行くと
いよよはたてに
うすびかりがしてゐる
何がはじまるのか
あるいは

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