明るい壁/緑茶塵
 
ように吐息が輝く。
ただ蒼い碧の中で、氷に浸された褐色のつま先は身を切るように細く、触れても触れても残る痕にはここが夜の森だと言う事を知る。
梟が家の明かりを確かめると、森の獣の一人が赤い大地を踏み鳴らして降りてゆく地下洞窟の鋼鉄の影が、静かに音を立てて古着の背に杯の痕を刻む。
この森の木の陰には太陽が当たらなかった。

かつて高き塔の賢者はいかづちと雲とを生み出して、魂の集まる森に僅かな恵みをもたらした。長き髪の巫女は暗い森を進み、やがて森に刻まれた運命を見る。巫女のまたがる獅子は土と影から生まれた鮮やかな緑色の蜥蜴をその権威を持って退ける。
槍と剣とがやがて交わり、還る事も眺める事も叶わなかった空と空との合間の魂を還す。
半身はやがて大地の果てにたどり着き、若く美しい双頭の白蛇に出会う。
太陽が昇る頃、大地の縁者たちは冷たい風にふかれ戦いの終焉のために羽飾りを纏う。

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