聖女のオルガン /服部 剛
 

( 僕のはしたない手の色と似ていた 


( 祭壇の向こうで 
( 十字架にかけられた人は 
( 僕のこころに降りてきて 
( 頭(こうべ)を垂らしたまま 
( 両腕を必死に広げ  
( Sさんと僕の間に立ち 
( お互いを結ぼうとしていた 


ステンドグラスの光に染まるオルガンには 
いつのまに 
聖女(シスター)が座り 
誰もいない教会の中に  
静かな旋律が織り成されていた 


瞳を開き 
長椅子から立ち上がった僕は 
一握りのゆるしを胸に 
教会のドアを 
開いた 




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