お年玉 /服部 剛
目が覚めて
階段を下りたら
まだ雨戸の開いていない
暗い部屋の食卓に
お節(せち)料理の重箱が置かれていた
「 寿 」と書かれた紙に入った箸(はし)が並ぶ中
ひとり分 小さなスプーンとホークがあったので
富山から姉と姪(めい)が来ているのを思い出した
慌てて階段を上り
2階で寝ている母を起こし
お年玉袋をもらった
再び階段を下りて
食卓の椅子に座り
甘いお屠蘇(とそ)にほろ酔いながら
「 今年も楽しくすごしましょうね 」
と一筆書いて
痩(や)せた財布から
できるだけきれいなお札を
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