想い出から/和泉 輪
 
青空や涙や鉄や靴
そのようなものと
血が繋がっている子


白昼のなかに
いつかのおまえは佇む
姿かたちはみえないのに
挨拶する声が聴こえる


十二月の終わり
終業式を終えた子たちが
跳ねるように歩いてくる


  「君たちのお母さんの
   幼い頃を憶えています」


  「ごきげんよう」
  「さようなら」


かつて青空の下で行われた
数々の楽しいこと美しいこと
それらの全てが私たちの
新しい伝統になればいい
戻る   Point(10)