マリンちゃんとジョニー/しゃしゃり
 
ガを持ってけって
それはジョニーの「ドカベン」
しかも三十二巻から三十六巻までで
読んだのかどうかはわからない

相部屋のおばさんたちは
鯛焼きなんか持っていくとよろこんで
ほんとうに可愛い可愛いと
マリンちゃんを可愛がっていた
俺は兄貴ということになっていて
マリンちゃんはいつも窓の外を見ていた

あのね

マリンちゃんが言った


別れたよ


俺はりんごの皮をむいた
ついでにみかんの皮までむいた
いらないよ、マリンちゃんは言ったけれど
俺はどうしたらいいのかわからないので
お見舞いのくだもの、
みんな皮をむいてしまった

病院から出ると
ジョニーのやつが待っていた
明日退院だってさ
俺が教えてやると
ジョニーはそうかと言ったきり
行ってやれよとは
もう言わない
ジョニー俺だって
そうそうおひとよしじゃないんだぜ

なんか欲しいものないかな
ジョニーが聞くので
そういや
ドカベンの三十七巻が欲しいってさ
てきとうな嘘をついたら
わかったと言って
もうジョニーは駆け出していた






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