常夜灯の下で  銀の夜を溶かして/蒸発王
 
った
時折
月に向かって遠吠えをし
夜を溶かしては
瞳を銀色に瞬かせるのです
遺伝子に組み込まれた
恋が
未だに駆り立てているのでしょう

遠吠えはね
恋歌なのですよ
絶対に届く事の無い



そんな事を思うとね
旦那


たかだか常夜灯の私でも
遠く染み渡る
甘く哀しげな鳴き声が
長きに渡って醸造された一級の睦言が
この銀色の夜を溶かすのを見るにつけ

哀しいように

蕩かされるように

うっとりとなってしまうのですよ









『常夜灯の下で』 ―銀の夜を溶かして―


戻る   Point(7)