常夜灯の下で 銀の夜を溶かして/蒸発王
った
時折
月に向かって遠吠えをし
夜を溶かしては
瞳を銀色に瞬かせるのです
遺伝子に組み込まれた
恋が
未だに駆り立てているのでしょう
遠吠えはね
恋歌なのですよ
絶対に届く事の無い
そんな事を思うとね
旦那
たかだか常夜灯の私でも
遠く染み渡る
甘く哀しげな鳴き声が
長きに渡って醸造された一級の睦言が
この銀色の夜を溶かすのを見るにつけ
哀しいように
蕩かされるように
うっとりとなってしまうのですよ
『常夜灯の下で』 ―銀の夜を溶かして―
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