彼/キメラ
起きたての薄ぼやけたひかり
ひとつまたひとつと現れては消える
いつもの窓から朝焼けは時をしらせ
人が死んだ世界で誕生する
彼にはそんなことはどうでも良かった
彼の名前は誰かに知らせる為には存在しない
通りを歩く楽しげな笑い声
海辺のショッピングモールでごったがえす
買い物客の喧騒や心地よさも
彼は流れ逝く全てを対象とし
世界の外側から絶えず見つけ
流れ逝く全てを愛した
初恋の甘さもなく
愛する人の腕の中で見る
永く柔らかい夢もない
ただひとつ間違えなく云えること
彼は決して恨んではいなかった
まだ彼が小さい小さい子供の頃
彼には父がいなかった
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