2番線ホームの/ku-mi
 
いつもの時間に仕事を終えて
いつもの足取りで駅へと向かう
信号が青になるタイミングも昨日と同じで
駅の階段の一段目を踏み込む足もやっぱり右足だ

いつも8輌目の真ん中に乗る
東西線への乗り継ぎが楽なように
人身事故のアナウンスが
この路線ではないことにほっとする
同じことを考える人で溢れる2番線ホーム

赤いコートの女の後ろに並ぶ
タバコ臭い男が隣に立つ
繰り返されない日常はそこにあるけれど
赤いコートもタバコの匂いも
誰かである必要はない

向かい側のホームにふと目をやると
薄汚れた格好の腰の曲がった老婆が
列の先頭に立っている
やけに派手な花柄の布手提げ
それはいつもこの2番線ホームで
後ろから先頭を見たときに目にちらついていた手提げ

老婆と手提げ
私と2番線ホーム
繰り返される日常はそこにあるのに

老婆はちゃんと8輌目の真ん中の
先頭に立っている
何が違うのかなんて
きっと誰もわからない
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