小詩集【肯定ペンギンの消えたコロニー】/千波 一也
れた叙情だとして
どの手がそれを望んだだろうか
やわらかいものたちが
やわらかく溶けてしまわぬように
願った分だけ
熱は過去に消えて
今夜、
みなもの月は
逃げ出しそうで
ひとりいそいで目をそらしたよ
ただあてもなく目をそらしたよ
うるんだ
みちで
二、蛍火
月へとのぼるその羽を
それとは知らずに
燃やすひと
あなた、涙ぐんでいますか
なつかしさをふところに
あたためる月、
とどかぬ月、
です
添い寝のほとりでささやく白は
ときをやさしく
凍らせます
目にみえるのにたどれない
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(14)