石ノ声 /服部 剛
歩道橋の汚れた階段下にある
自転車置き場に入ると
頭がぶつかりそうな段々が着地する隅に
大きい石が一つ置かれていた
幾度も自転車を置いた階段下で
今まで見たことのない石が
遥かな昔に置かれたような不思議さで
黙って 独り そこにいた
( 遠くで走るモノレール
( レールの振動が駅に近づいて来る
( 石をみつめるわたしの影
( 階段裏に映っている
( 一日を終えた人々の疲労をのせて
( 階段下に響く無数の足音は
( 独りの石に降りつもる
鍵を指し
階段下から自転車を出したわたしは
独りの家へと
ペダルを漕いだ
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