麦畑の舟 /服部 剛
 
一面に広がる金色(こんじき)の 
麦畑の上に浮かぶ 
一本の道 

飛び込み台のように 
道の途切れた向こうに浮かぶ 
一艘(いっそう)の船 

途切れた道先に 
組んだ両手を腰にあて佇(たたず)んでいる
一人の女 


( 傍らに
( ぼんやり姿を現す
( 野仏の影 


女はいつまでも立っている 
背後に自らの影を伸ばして 

吹き過ぎる風になびく
金色の麦畑の上
手の届かない場所で 
夕陽に染まりゆく
舟を眺(なが)めて 



  * この詩は吉田稔美氏の絵「Ship」を参考に書きました。 




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