『笹の葉の揺れ方』/しめじ
 
バリかどこかで爆弾が破裂する 
ヒズボラの少年が銃口を覗き込んで笑顔をこぼす 
ダルフールの少女が破れた胸元を必死で隠している 
日本の少年が注連縄で首をつる 
そんな風にして
僕はおなかがすいたので 
白菜を鍋でゆでます 
ほんだしなんか入れてみたりしてね 
おいしい卵が手に入りました 
卵とじをこしらえながら思うのは 
遠い異国の惨状ではなくて 
夏に出会った雪のこと 
ヒイラギが咲いて 
吐き出した羊雲  
小さな願いは届かずに 
二等星の真横に消えていきます 
せめて十個入りの卵のひとつを 
捨てずに彼らに渡せたならば 
空想は具現化し世界を変える 
まぶたの奥に移るのは 
あの日の笹の揺れ方なのです 
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