小詩集【シンメトリー・パンドラ】/千波 一也
 
ることを




六、分水嶺

みぎてと
ひだりては
まったく違うけれど
まったく同じ
それは
重ねたかたちではなく
重ねようとする
その
こころのなかに
あらわれる


水を掬う両手は
かならず
わずか
こぼしてしまうけれど
そこから川は
ゆくのかもしれない

至らなさとは
おろかさを間違えること

風や海や星たちに
誰も
際限なく
こたえることはかなわない

おろかさとは
そそぐものを
あふれるものを
そのままにしておかないこと

ありのままを
ありのままに

誰もがきっと分水嶺

頂上高く
そびえることはかなわなくても
両手を重ねたかたちを知れば
流れは絶えず
よどみなく

誰もがきっと分水嶺






[グループ]
戻る   Point(22)