小詩集【シンメトリー・パンドラ】/千波 一也
 
わたしに及ばない

向かい合うことが
ひとみ

通い合う
まなざしにだけ
姿ははじめてあらわれてゆく


水は
わらっていただろうか
にげていただろうか

わたしのゆびには
うるおいがひとつと
波のゆくえが幾重にも
透きとおる

それは
無限にひとつの
ひとみをこぼれる




三、舞う鈴の音に

鳥居に
菊花を吊るしたら
砕ける桟橋
傾ぐ舟

手鏡ぬぐえば
小太刀まばゆく
たちこめる宵
群がる灯篭


座頭の爪弾く
琵琶は千年
雀の遊ぶ
鳴子はこがね
雲居をながれる
琴の音ならば
せせらぐ川面に
満ちて
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